「この仕事、あの人しか分からない」という時限爆弾
「この作業、〇〇さんしか分からないんですよね」 「もし、あの人が急に休んだら、うちの業務は完全にストップしてしまう…」 あなたのチームに、こんな会話は存在しませんか?
特定の個人のスキルや経験に依存することを「属人化」と言います。そして、それはチームの成長を妨げる、静かな時限爆弾です。 なぜなら、働くメンバーの心に2つの問題を生み出してしまうからです。それは「自分がいなければ」というプレッシャー。そして「自分がいなくても大丈夫」という安心感の欠如です。
もし心当たりがあるなら、ご注意ください。それはあなたのチームが、まだ本当の「組織」ではないサインかもしれません。 そこで、この記事では「人の集まり」から進化する方法をお伝えします。チームの属人化を解消し、真の「組織」になるための方法です。 メンバー全員が安心して能力を発揮できる、2つの重要な要素についてお話しします。

あなたのチームは「集団」ですか? それとも「組織」ですか?
経営学者のチェスター・バーナードは、組織が成立するために3つの要素が必要だと言いました。それは「共通目的」「協働意思」「意思疎通」です。
これをシンプルに解き明かします。組織とは「明確な目的地(共通目的)に向かって、全員で協力しながら進む一隻の船」のようなものです。 ただ同じ場所に居るだけの「集団」。未来に向かって共に進む「組織」。 あなたのチームを後者へと進化させるために必要なもの。それが「コンパス」と「航海術の教科書」です。
1. チームの進むべき道を照らす「コンパス」(共通目的)
まず、最も重要なのが「コンパス」、すなわち共通の目的です。 どれだけ優秀なクルーが揃っていても、向く方向が違えば船は進みません。むしろ、その場でグルグルと回り続けてしまいます。
「私たちは、何のためにこの船に乗っているのか?」 「私たちは、どこにある、どんな宝島を目指しているのか?」
例えば、この問いの答えを、メンバー全員が自分の言葉で語れること。 それが、チームの心を一つにします。そして莫大なエネルギーを生み出す原動力となります。

【CHECK POINT】 あなたのチームの会議は、建設的な話し合いになっていますか? 組織の目的が曖昧だと、会議はうまくいきません。(※この点については、私たちの記事『なぜ、あなたのチームの会議は「時間泥棒」になるのか?』で詳しく解説しています)
2.「航海術の教科書」で属人化を解消する(スタンダード)
コンパスの次に必要なのが「航海術の教科書」です。これは業務のスタンダード(標準)を意味します。 これは、船の基本的な動かし方。嵐が来た時の対応マニュアルのようなものです。
この教科書があれば、操縦は「伝説の船乗りの勘」に頼りません。クルーなら誰でも一定水準でこなせるようになります。 これこそが、「属人化 解消」への道です。
「マニュアルは個性をなくす」と考える人もいるかもしれません。しかし、それは全くの逆です。 船の動かし方という基本業務が標準化されている。だからこそ、クルーは安心して、より高度で創造的な仕事に挑戦できるのです。
- 新しい航路の開拓(新規事業)
- より速く進むための帆の改良(業務改善)
- 宝のありかを示す星の読み方(専門スキルの習得)
このように、基本的な業務に悩む時間がなくなります。その結果、メンバーの創造性を育む美しい『余白』が生まれるのです。
「突き抜けた能力」が生まれる瞬間
そして、この2つが揃った時、奇跡のような相乗効果が生まれます。 進むべき道を示す「コンパス」と、安心して航海できる「教科書」。
この盤石な土台があって初めて、メンバー「一人ひとり」の隠れた才能が開花します。組織全体の成果に貢献する「突き抜けた能力」となるのです。 ある人は「眼」で新たな大陸を見つけるかもしれません。誰よりも遠くを見通せる眼です。 ある人は、風を読む「肌感覚」で、船を驚くほど加速させるかもしれない。
なぜなら、それは、全員が同じ目的地を目指し、船が沈む心配がないと信じられる「心理的安全性」の中でこそ、最大限に発揮されるからです。

偉大な航海の第一歩は「問い」から始まる
もし、あなたのチームが「属人化」や「停滞感」に悩んでいるなら…。まずはこの問いから始めてみてください。
「私たちの船が目指している、たった一つの目的地(共通目的)は何か?」 「私たちの船の動かし方(スタンダード)は、誰が見ても分かりますか?」
要するに、完璧な教科書をいきなり作る必要はありません。 まずは、チームで目的地を言葉にして共有することから。 その結果、あなたのチームは偉大な第一歩を踏み出せます。つまり「集団」から「組織」へと進化する一歩です。 この一歩が、チームの属人化を解消する鍵となります。
もし、この「航海図」作りを、一緒に行うパートナーが必要だと感じたら、いつでもお問い合わせページからお気軽にご相談ください。